菅先生インタビュー1 細いカテーテルによる治療とは
宮崎県都城市のベテスダクリニックの菅ドクターにカテーテル治療について伺いました。
(インタビュアー:崎田さおり)
崎田 循環器のカテーテル治療において、べテスダクリニックでは、通常よりも細いカテーテルを使った治療を行っているとお聞きしました。

宮崎県都城市のベテスダクリニック 細いカテーテルを使用した循環器治療を手がける菅好文ドクター
菅先生 今から40年ぐらい前から日本でカテーテルを使って冠動脈を広げる治療が始まりました。その後、20年ぐらい前からステントという金属の筒による治療が行われるようになり、成績は向上しましたがその一方で、金属の筒が血栓でつまるという重大な合併症が起きるようになりました。それを予防するため、強力な抗凝固療法が行われました。
最初カテーテル治療は、足のつけ根からカテーテルを入れて行っていたんですが、この強力な抗凝固療法のため出血性合併症が生じるようになりそれが原因で輸血が必要となったり、退院が延期されたり、場合によっては命にかかわるようなことも起きるようになりました。この出血性の合併症を少なくするにはと考えられたのが、手首の動脈を使うという方法だったんです。
この手首の動脈を使う方法を考えたのは外国の先生で、海外でしか治療例がなかった時には、日本人の血管は細いから手首を使っての治療は難しいだろうと考えられていました。しかし、台湾の病院で手首から治療しているのを湘南鎌倉総合病院の斎藤先生が見られ、日本人でもできるのではと考え、開始されました。
現在では多くの病院で、6フレンチ(約2.0ミリ)のカテーテルを用いて、手首の動脈を使う治療が行われています。ただし、日本人の手首の動脈は細いために、現在多く使用されている6フレンチというサイズのカテーテルでは、男性の2割、女性で約半数の人には太すぎて、動脈がつまったり、痛みを感じたり、出血が多くなったりなどの合併症が出ます。それらの不具合をなくそうと、私は8年前から4フレンチ(約1.4ミリ)という細いカテーテルを使用する治療を行いはじめましたし、この治療を採用しているのは南九州では当院だけです。
崎田 細いカテーテルで治療をされる場合の患者様のメリットとは、どこにあると考えられますか?
菅先生 細いカテーテルを使うことで、造影剤の量を減らせます。また、入院日数が少なくて済みます。多くの場合は、カテーテル治療を行ったその日のうちに自宅に帰ることもできます。
それだけ患者さんの体の負担が少ないといえます。とはいえ、当病院では遠方から治療に来られる方もいるので、大事をとって1日から2日入院をさせています。しかし、それでも太いカテーテルを使って治療するよりも、入院日数は短いです。
平成7年より、手首からカテーテルを入れる治療が始まりましたが、平成20年頃から、少しでも細いカテーテルを使って治療ができないか検討する研究会が発足しました。当時はまだ使える道具が少なかったため自分達で改良したりしていました。そして6フレンチから5フレンチへ、今では4フレンチへと進化して、今日に至ります。
各地で公開治療を行い、技術を研究しあって、現在では細いカテーテルを使った治療は、一部の施設ですが主として行われるようになってきました。